独り言の記憶
独り言の記憶
白い砂漠で独り呟く

重力ピエロ

重力ピエロ

新潮社
伊坂 幸太郎

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実は朝、読み終わって感想書いてたのですが、IEのエラーで吹っ飛びました。
フテ寝して起きました。これから復元できるか不安になりつつ書きます。
そういえば、IEver.7.0はやっぱり手に負えなかったし
エラーも減らなかったのでアンインストールしました。

ちなみに読んだのは文庫です。


伊坂さん二冊目。そこ、順番がおかしいとか言わない(笑
確かに今回のは『オーデュボン』の主人公や
『ラッシュライフ』の黒澤さんが出てきてて、
「他の読んでからの方が楽しいかもなあ」とは思ったけど。

泉水と春は兄弟。
冴えない公務員だけどかっこいい父と、元モデルの綺麗な母に育てられた。
家族はとても仲がよかったが、重い過去に苦しんでもいた。
兄弟が大人になったある日、町で放火事件が起こる。
放火とグラフィティアート(落書き)の関連性から調査を始めた泉水は、
家族にとって大きな意味を持つ事件に巻き込まれていく。

                     (参考:裏表紙の紹介文)


えー、僕の中では、これはミステリではありません。
トリックは結構すぐにわかるし、犯人もわかるし、動機は明白だし。
動機と手段を結ぶ線が予想しにくかったくらいです。
いや、そもそも、トリックとか犯人とか動機とか探偵とか、
そんなことはどうでもいいのですよ。
(今回の探偵は格好良くて好きだけど……それもおいといて。)

この話の主題は「性」と「生」なのです。


「どうして人間には発情期がないんだろうな」「ゴリラの子殺し」
「哺乳類の中で、日常的にレイプが行われるのは、
 人間とオランウータンとゾウアザラシだけらしいよ」
「ボノボの社会」「彼らにとってはセックスは挨拶なんだ」
「人間は生物の中で唯一、生殖とセックスを切り離した、なんてね、
 偉そうに話す人がいるけど、嘘だよ。ボノボだって同じなんだから。
 しかも、彼らの方がよっぽど平和に暮らしている。
 性的な哺乳類という同じ道を歩んだものの、
 ボノボは成功例で、人間は失敗作だったんだ。」


結構びっくりしました。
以前、武者小路実篤の自慰行為を正当化するような文章を読んで、
凄まじい嫌悪感を覚えた記憶があります。
(しかもそれが全集の一番最初だったから、
 それ以降の話を読まずにおさらばしてしまった;)
僕にとっては「性」のテーマはタブーに近いのです。
僕は自分の中の性的な部分を正当化できないし、したいとも思いません。
「本能」とか呼ばれる部分に突き動かされるのが嫌です。
自分の中の性的な部分が嫌いであり、そう言うことで生じる矛盾が憎らしい。

そんな感じで、僕はあまり「性」がテーマの本を読みたいと思えません。
今回読んでみて驚いたのが、その語られ方。
さっぱりとしたシチュエーションで、兄弟という間柄で、
しかも軽快で巧妙な会話として語られていきます。
それでも決して軽いわけではありません。
語り手はあくまでも冷静で、真摯で、厳しい立ち位置を崩さず、
心境を思うとその重みで潰されてしまいそうになるような台詞を
次から次へと言ってのけます。
まるで「重力を忘れたピエロ」のように。

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

この台詞が『重力ピエロ』のスタンスを示しています。


ただ、二つだけしっくりこないところがありました。

一つは、最後の犯行のシーンが霧に隠れること。
そこは描かれるべきだろう、これじゃあテレビの中の犯罪と何も変わらない、
現実味が全然ないじゃないか、と思いました。
ただ、誰もはっきり見ていないから一応完全犯罪になるのかなあ、という点と、
何より見えなくても、見えないからこそ怖い部分もあると思い、
どっちつかずな感じです。

もう一つが、最後に罰せられないこと。
いや、実際どうなるかは書いていないんですが、
書いていないあたりが「エンターテイメント小説的」でした。
まあ、社会や法律に罰せられる理不尽さ、みたいなものは
この話のテーマから外れてしまうので、これでいいのかもしれませんが。
書いてないというところが巧いし、ちょっとずるいなあ、と思ってしまいます。


何はともあれ、なかなか読めました。
近いうちに『オーデュボン』を買っていただけるらしいので
嬉しくて小躍りしております(自分で買わないのかよ;)


絶望の大きさ

卒業式まで死にません―女子高生南条あやの日記

新潮社
南条 あや

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南条あや。
リストカッター常習犯にしてクスリマニア。
以前サイトにリンクを貼ったこともありますが、
今回も貼ってしまいましょう。こちらです→南条あやの保護室


本の中身は、ネット上で公開された日記。
ただ、後半+αという感じで全てが載っているわけではない。
ネット上に日記を載せ始めてから一年経たずこの世を去った彼女だが、
その文章はかなりの量に達している。
実を言うと僕もまだ全てに目を通していない。(入院のあたりが未読。)

サイトの日記は途中で読むのを断念したり、
文庫を見つけて買っても読まなかったりと色々あったが、
ようやっと(とりあえず本のほうは)読み終わった。

で、最後に残るのはやっぱり、

南条あやさんは何で死んだのだろう。

という疑問だった。
もちろん答えは載ってないし、そもそも到達できないとわかっていても。
いくら思い巡らしても、それは推測でしかないし、
その行為自体にあまり意味がない。
結局、なにもわからない。彼女の絶望の大きさは、彼女にしか分からない。

ただ、これはひどく不謹慎だしひどく失礼な話だけれど、
この本やサイトの日記を読む限り、
僕にはどうしても南条あやさんが死んだと思えない部分がある。
過去に書かれた日記を読んでいるのに、
昨日か今日のことのように感じてしまう。
今でも彼女は必死で笑いながら生きているように思えるのだ。

僕の底の浅い悩みや、リストカットで死ねると思っていたことは、
彼女に鼻で笑われるか、あるいは失笑を買うくらいのものだろう。
僕が色々な意味で恵まれていることは、僕が一番よく知っている。
それでも、「死にたい」「死のう」と思ったときの絶望の大きさも、
それなりにだけれど、知っているつもりだ。
それを抱えてなお笑ってみせる、明るい文章を書いてみせるような
南条あやさんを、僕はやっぱりかっこいいと思う。


ブラックランド・ファンタジア

ブラックランド・ファンタジア

集英社
定金 伸治

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初、定金さん本。

19世紀英国帝都――。
貴族の間では様々なものをチェスの賭けとする真剣《デュール》が流行していた。
スィンは親権師として雇われ、雇い主の代わりに勝負する。
彼は特異な環境に育った姉・ネムと出会い、彼女と共に暮らしていくことになる。
ある日の勝負で、ネムはスィンの後をついでチェスを指し、
スィンが勝てないと思っていた相手を打ち負かしてしまう。
それからスィンの周りで不可解な事件が続くようになり……。

                    (裏表紙の紹介を流用・変更)


可愛い話でした。

それにしても、なんつーか、ネムの設定なんですが、
飼っている犬から思いついただけのことはあるなあ、と。
長い間縛られていたために手足を動かすことができず、
変わりに数を数えること、物を覚えることに長けた女の子。
ただし、感情が昂ぶれば噛み付くし、威嚇のために唸るし。
そう考えてしまうと物凄く際どい話になってしまうんだけれども。
人を人と思えなくなってしまいそうな、危ういラインです。

しかしネムが好きだ。
かっこいい。歪んだ感じが素晴らしく好み。
そして星 樹さんの描くネムがまた素晴らしい。
表紙をぺらっとめくったところの、
スィンがチェスを指してる横のネムさんとか最高ですよ。

物語自体はほどほどでしたが、心地よい感じでした。
やはり定金さんは『ジハード』を読むべきなのかな。
でも次は『制覇するフィロソフィア』が読みたいと思っております。


カオス レギオン

カオスレギオン 聖戦魔軍篇

富士見書房
冲方 丁

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興奮冷めやらぬうちに。
明日のバイトに支障を来たそうとも。

天界と堕界を分かつ混沌(カオス)の大地、アルカーナ大陸。
その地で、赤髪の黒印騎士(シュワルツ・リッター)ジークはある男を追っていた。
名をドラクロワ。かつて理想を掲げ合い、共に戦った友。だが、今は倒すべき相手。
二人の間に一体何が? その決着とは?

                     (表紙裏?あらすじより引用)

良い!
★五つ!
自信を持って薦めましょう!
素晴らしい物語です!

富士見ファンタジアの特徴なんでせうか、
けっこう硬派でバリバリのファンタジーでございます。
文体も雰囲気もライトノベルと言うにはやや堅い感じ。
ぶっちゃけ漢字多くて、ふりがながこれまた多い。
ページが良い感じに黒く埋め尽くされてましてよ。

しかしそんな堅さを全く感じさせないストーリー。
息を飲む展開。際立つキャラの苦悩と悲哀。
そして、これでもかというほど描かれる戦争の凄まじさ。
残虐。殺戮。斬撃。激痛。悲鳴。咆哮。

戦争は、万能ではない人間の、原初からの行いである。

この一文が、突き刺さって抜けません。


二人(三人)の決着に涙したのは言うまでもありません。


明日からの地下鉄読書は、『カオスレギオン0』。
どうやらジークとノヴィアさんとの出会いっぽい。
楽しみです。
冲方さんの本、買おう。


BLAME!

BLAME! 7 8 9

講談社
弐瓶 勉

10の画像がないのが残念。
1〜6はこちら

7巻で一転。
下の階層では人々を襲っていた「セーフガード」が、
意思疎通でき、人間を守る役目を負っている。
霧亥とシボが新たに訪れた階層には、ドモチェフスキーとイコという
二体の「臨時セーフガード」が珪素生物の侵略に抵抗していた。

10巻で完結なのだが、この終わり方は……うーん、という感じでした。
結局最後の最後まで説明がなかった……。
最後、「あれ」はどうなるの? どういう結果に?
セーフガードの立場が階層によって異なる理由は?
(統治局が転送したセーフガード・代理構成体と
 珪素生物によって暴走しているセーフガードって認識でOK?
 最初に出てきたサナカンはサナカンの「データ」が暴走していただけ、
 あるいは珪素生物によって盗まれただけで、サナカン本人ではなかった?)
最初に犬と一緒に出てきた女の子は?
うーん。やはり説明を求めてしまうなあ;

最後の最後まで、雰囲気はかなりいいんですけどね。
人のいない砂漠をひたすら歩き続けているような感覚。
そしてシュールな世界。
9巻の窓際に座るシボさんとか、変形した建設者とか、ツボでした。
キリコの描く世界に似た静けさを感じました。


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